「そんなの聞くまでもなく、正社員のほうがいいに決まってる!」
多くの人はそう答えるかもしれません。
けれども、変化の多い時代、色々な考え方が合っても良いと思うのです。
私は、転職を10回以上してきましたが、その経験を元に一般に言われることと違う視点で考えてみました。
なにかの気づきやこれからの仕事を考えたり転職を考えるうえで参考になれば幸いです。
自分の時間の確保
正社員-就業中の時間の内訳も考慮すると…
正社員であれば、一般的に始業時間就業時間が決められているところがほとんどでしょう。
通勤時間も実質的に仕事での拘束と同様です。
時間が決められる事によって、満員電車などのストレスに耐えなくてはならなくなります。
また、残業に関しても、依頼されれよほどのことがない限り断ることも難しいのが正社員です。
通勤時間から残業時間、その後の帰宅時間までいれると正社員での働き方の時間拘束はあまりにも長時間と言わざるを得ません。
一方で、企業によってはフレックスタイム制度やリモートワークが導入されており、通勤時間柔軟な働き方も増えてきています。
通勤時間がなくなることやラッシュアワーを避けての通勤時間は、時間的にも精神的ストレスにも拘束緩和といえます。
就業内容での時間の内訳を見てみると、会議が強制参加だったり打ち合わせを断れなかったり、昼休み時間が決められていたりします。
就業時間に関する自己裁量権が少ない印象です。
業務量の調整も自分自身ではなかなか難しいのが現実です。
希望する仕事内容だったとしても、就業時間の半分以上が会議と打ち合わせだったとしたら、その仕事に集中していると言えるでしょうか?
これまでの転職で働いていた会社の中には、会議時間ばかりのところがありました。
実際に働いてみないとわからない部分なので、転職活動では内情を探るには難しい部分ではありますね。
派遣社員-就業時間の仕事、勤務時間、残業有無はすべて自分で決めている
契約で勤務時間、残業時間の有無や範囲、勤務場所が明確に定められています。
そして、その内容は、契約期間中に強制的に変更があることは少ないです。
何より、その条件で働くことを決めるのは自分自身ということです。
ですので、業務時間以外は、時間設定がしやすく自分の時間に予定が立てやすいと言えます。
もちろん、残業も頼まれた場合には快く引き受けるのも職場での関係を円滑に楽しいものにするためには必要なことです。
自分の予定がない場合には、「残業可能ですがなにかお仕事ありますか?」の一言で信頼貯金を増やすことができます。
残業のときは、こちらから「〇〇の業務を本日中に終わらせたいために残業してもよろしいですか?」と確認するほどです。
それほど、派遣社員は契約で働き方が決められている、という印象でした。
そして、就業中の仕事の内容も自身のスキルを活かしての仕事がほとんどです。
私は、グラフィックデザイナー、Webデザイナーの派遣社員として勤務経験がありますが、社員が手を動かせない分、制作・数値を見ての改善策の提出・新しいデザインやコピーの案出しなど持っているスキルをフルに使って仕事をしていました。
また、完全在宅の勤務の場合でも、出席しなければいけない会議などもないことがメリットです。
出席する会議やミーティングに合わせての時間の拘束はほとんどなく、休憩時間は制作の集中が切れた時の好きな時間に取っていました。
仕事中の時間配分の裁量権が大きいことも派遣社員のメリットと感じました。
給与や手当、通勤に関して
正社員-何と言っても給与の安定や手当の豊富さ、けれど勤務先は選べないことも
会社の売上や運営に貢献してもそうでなくても、安定した給与が期待できます。
また、退職金制度やボーナスがある場合も多く、福利厚生も手厚い場合があります。
安定的な収入があり、基本給も一度アップすると下がることはほとんどありません。
将来的、かつ長期的なライフプランが立てやすくなります。
手当に関しては、基本的給与に加えて毎月の手取りが多くなる傾向があります。
昇給や資格取得で手当が増えるのであれば、スキルアップを目指すモチベーションが上がります。
働く場所に関しては、働く間中、同じ場所で勤務の保証はありません。
会社からの転勤命令があったりした場合は、断ることは難しいと言えます。
長期間同じ会社に努めていても、勤務先の会社が移転などでそれまでの場所から変わる可能性もあります。
会社都合で、単身赴任になったり、通勤時間や通勤状況が変わったり、毎日の負担が大きくなることがあります。
派遣社員-完全時給制で会社の休みが多い月は収入ダウン、手当などは悪くない
時給が通常のアルバイトやパートに比べ、高めに設定されていることがほとんどです。
スキルに応じてその金額が高くなる傾向があります。
一定の勤務期間を働くと、一般的な正社員同様、有給休暇も付与されます。
ですが、派遣先の企業が年末年始・夏季休暇などにより休業となると必然的に勤務時間が少なくなり、その月の収入も下がる傾向があります。
通常は嬉しいはずの祝日も(勤務条件にもよりますが)休みとなることも多く、その分、収入も減額します。
また、ボーナスや退職金がない場合がほとんどです。
契約期間も定められており、新たな契約内容によっては、収入が下がる可能性もあります。
長期的な収入安定性に欠け、ライフプランが立てづらいことが最大のデメリットです。
2020年4月以前の派遣社員契約では、通勤手当はありませんでした。
時給の中に通勤手当分が含まれている、という計算だったのです。
ですが、2020年4月から始まった同一労働同一賃金のルールにより、派遣社員にも給与とは別に交通費が支給されることになりました。
これは大きかった…!(心の叫び)
仕事の条件はマッチしているけれども、交通費のかかる遠い勤務先であきらめていた仕事も選べるようになり、派遣の仕事の選択肢が広がったというメリットがあると思います。
派遣社員は、転勤というものはありません。
契約には勤務先の明記もしっかりとされています。
企業の移転が合った場合、おそらくその時点で契約更新の確認がなされるのだと思います。
スキルアップとキャリアアップ
正社員-長期的なスキルアップ、キャリアアップをイメージしやすいがポータブルなスキルがつくかは不明
メリットは、長期的なキャリアパスを描きやすく、企業内での研修や教育プログラムが充実しているところでしょう。
デメリットは、特定の業務に固定されやすく、スキルの幅が狭くなる可能性があることです。
長期的なキャリアを見据えた業務に従事でき、責任ある仕事が任されることが多いです。
自由度が低く、与えられた業務に縛られることがあります。
また、定期的な昇進や昇給のチャンスがあることも確かです。
その結果、長期的なキャリア形成が可能です。
一方で、すくないパイを取り合うことから昇進競争や社内政治があったりして、向いていない人にとってはストレスが増えることがあります。
仕事での責任の範囲も大きく、立場があがるにつれ責任も重くなってきます。
人をマネジメントする、という難しさから人間的にも成長できるチャンスがゴロゴロ転がっています。
その機会をものにすれば、自分自身に大いなる付加価値がつきます。
派遣社員-スキルアップはできる、けれどもキャリアアップ、マネジメントなどのスキルアップは厳しい
様々な企業や職場で働くことができ、多様なスキルや経験を積むことができます。
自分が選べば、同じスキルをし続けることもでき他業種で磨き上げることも可能でしょう。
その一方で、 一つの企業に長く留まることが難しいことも多く、基本的には仕事を指示されて行うことも多いので、そういった場合は後輩を育てる、人のマネジメントをするという機会はありません。
結果的に、派遣社員を続けるのならばそのようなスキルが身につく機会は少ないと考えます。
一方で、30代後半以降になって正社員への転職を考える際、そういったマネジメントの経験を求められることも増えてきます。
ポータブルスキルの「人との関わり方」にあるように、マネジメントや人を育てるスキルは長期間同じ会社で働く正社員ならではのスキルと考えられます。
自分が求めるスキルによっては、勤務形態のあり方もしっかりと把握しておく必要はありそうです。
派遣での働き方は、契約内容に応じて業務が決まるため、比較的自由に求める仕事を選ぶことができます。
契約内容で決められた業務内容に制限があることも多く、それ以外の希望する仕事ができないこともあります。
私が派遣社員をしていた時は、やはり契約内容以外の仕事をする時は上司からの確認が入ることが多い印象でした。
(〇〇の仕事は契約外の内容だけどもいい?という感じです)
派遣社員で契約している方は、業務外の仕事も(よほど避けたい業務でない限り)快く引き受けてゆくと自然とスキルアップにつながる機会も多いです。
実際に私がもつ動画編集のソフトの扱いや制作スキルは、派遣の仕事で身につきました。
また、企業内での昇進や昇給のプレッシャーが少なく、自分のペースで働けます。
仕事の評価は、求められるスキルで正社員の仕事の戦力になっているかどうか、と私は感じています。
勤務態度は、良好であることが当たり前でベースでもあります。
仕事で求められる成果を出せているかどうか、ある意味では厳しいと思われるかもしれませんが、シンプルでわかりやすく、業種を問わないテクニカルスキルの見せ所だと思います。
ポータブルスキルに関しては、「仕事のし方」に関するスキルは得意分野になってくるのではないかと思います。
「ポータブルスキル」とは、職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキルのことです。
ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)
人間関係について
正社員-人間関係は「深く長く」、関係が合わない場合は逃げ場がないことが多い
同じ職場に長くいるため、安定した人間関係を築きやすいです。
新卒や同じタイミングで転職してきた人であるならば、最初の前提条件も揃っていて親しくなるのも時間がかかりません。
同期入社はそれほど苦楽を共にでき一緒にいる時間も長く、深く長くの関係になりやすいです。
正社員における人間関係の最大のデメリットは、人間関係の問題が発生した場合、簡単には逃れられないことがあります。
人事異動で人の入れ替わりがあることが多い正社員での勤務です。
もしも苦手な同僚や方向性の合わない上司が職場にいる場合が、正社員の辛いところだと思います。
こちらから移動の希望が叶えられることも少なく、逃げ場がない状況に陥ることがあります。
自分もしくは苦手な相手の移動か転職が決まらない限り、この状態は数ヶ月から数年続く可能性があります。
派遣社員-人間関係は「短く濃く」、互いに一定距離がある
短期契約、長くても3年の同一職場の契約が多いため、人間関係の問題が生じた時でも契約終了までの数ヶ月を耐え抜けば、次の職場に移ることも可能です。
一方で、期間が短いがゆえに、深い人間関係を築くのが難しいことがあります。
けれども互いのフィーリングが合えば、関係が深くなるまでの時間は関係ありません。
大人になってからの気の合う人との出会いは、職場や趣味の場と限られたものとなりがちで、学生時代から比べると圧倒的に少なくなったと感じる人は多いと思います。
派遣では短い契約期間で職場を変わることから不安定で良くないと思われがちです。
一方で様々な立場の人と定期的に新たに出会える可能性が高くなるということでもあります。
人間関係が固定化せずに流動的になることも、新しい出会いの可能性も広がることでもあるということです。
仕事なので友だちを作りに行くことが目的ではありませんが、雰囲気の良い職場での勤務のほうが良いという人が多いと思います。
人間関係の選択の自由がある派遣での働き方もひとつだと思います。
契約形態
正社員-日本の法律では解雇が難しい、よって安定抜群
雇用契約が長期で安定しているうえに、日本の法律では被雇用者は保護が手厚いために、職を失うリスクがとても低いです。
企業の利益になら内働き方をしても、給与は一定額支払われます。
また、年金や社会保険も会社側が負担とその手続きの一切をしてくれます。
企業の確定拠出年金制や持ち株制度などもあり資産を増やせるチャンスもあります。
企業によっては、退職金制度があり、退社時にまとまったお金を受け取ることができます。
派遣社員-派遣法で3年ルール、更新は数ヶ月単位でそのたびにドキドキ
短期契約が多く、柔軟に職場を変えることができる一方で、契約が切れるごとに次の職を探さなければいけない不安定さがあります。
契約終了時に自然に退社でき、手続きが簡単です。
派遣元企業は、退社に関する手続き
職種にもよりますが、派遣先企業への引き継ぎは、最後まで責任を持ってする必要はあります。
それでは「まとめ」いきましょう
正社員と派遣社員のメリットとデメリットをそれぞれの項目で比較してみました。
捉え方によっては、あれ?自分の生き方としては、正社員が無条件でいいとは言えなくない?と思うところもあると思います。
自分が大切にしている価値観によって、正社員がいい、はたまた派遣社員がいい、といろいろあります。
転職回数10数回で正社員も派遣も契約社員も体験してきた私は、盲目的に正社員にならなければと考えるのは苦しい考え方かなとも思います。
ただ、ここまでの記事で、派遣社員として就業する絶対的条件をあげるとすると、
「どの業界でも採用されやすいスキルをもっている」「将来設計をしっかりと見据えている」
ことです。
その一方で現在の企業で言われる常識からは、その一般的な考え方から外れると元の正しい軌道に戻れないと思う人が多いのも事実です。
(なので職務経歴書に空白や短期離職があったりすると「履歴書にキズがある」という言い方をするのかなと思います)
けれども元の軌道とは、はたして自分軸で決めていることでしょうか?
自分の人生をデザインする時、自分の価値観を大切にしライフスタイルやキャリア目標に最も適した選択をすることが重要です。
そこには、同じ経歴の人はいなくなると思います。
ぜひ、自分の大切にしたいことを大切にして転職活動を勧めてほしいと思います。
がんばりましょ!