就職氷河期世代と呼ばれる多くの方々が、長年にわたり不安定な職業状況に悩んでいると言われてます。
そして、その世代に対する政府主催の就職氷河期世代活躍支援というものがあります。
就職氷河期世代には現在も正規雇用が少なく支援が必要。
が、これは本当なのでしょうか?
結論、就職氷河期世代の特に女性に限って言えば、大変だったよな〜という数値の兆しはあります。
ちなみにわたしは、この就職氷河期に置いても底辺と言われる、2000年の就職活動でした。
あの大変だった頃を思い出すと、いや〜たすけてくれよぅって感情的な部分も出したいところです。
むしろ、あの大変さを経験したから「あっ、会社には頼れないんだ」と覚悟を決めたということもあります。
そして、女性のキャリアは世論の流れや自身のステージによっても大きく影響されると言えます。
ですので、一概には言えないのですが就職氷河期当時やその後の雇用に関する数値などをみて考えてみました。
もしも、今、自分は就職氷河期だったから就職先がうまくいかなかったんだという気持ちがあるならば、その考えを見つめ直すきっかけになってくれれば幸いです。
就職氷河期世代の就職に関する事実
就職氷河期世代が新卒時に就職で苦労したのではないかという事実は、いくつかの統計データから確認できます。
政府がこの世代への支援を行う根拠となる主なデータは以下の通りです。
当時の有効求人倍率の低さ
1991年のバブル崩壊以降、有効求人倍率の低下が続き、1999年には0.48倍まで下がりました。
有効求人倍率は1999年平均で0.48倍となり、比較可能な1963年以降で最低となった。四半期別にみると、1999年1~3月期0.48倍の後、4~6月期、7~9月期0.47倍と過去最低水準の後、10~12月期は0.49倍、2000年1~3月期0.52倍と上昇し、6四半期ぶりに0.5倍台となった。
厚生労働省ホームページ「第Ⅰ部 平成11年労働経済の推移と特徴」
これは、就職氷河期世代が就職活動を行っていた時期と重なり、就職活動が極めて厳しい環境下であったことを示しています。
そして、特に就職氷河期世代の「女性」がこの荒波を直撃したのではないかと考えています。
新卒正社員率が高い大卒男性は 1993 年時点でも 7 割を超えていたが,1999 年には 6 割を割り込んだ。
途中略〜大卒女性については 1988 年の新卒正社員率は 58.0 % と大卒男性に比べてかなり低いが,当時は短大卒女性の方が大卒女性よりも就職がよいと言われていた時代であり,その反映だと思われる。その後1992 年に「新卒正社員率」はピークとなり,1994 年には 6 割を割り込み低迷したが,2006 年に 6 割に戻し,リーマンショックはあったものの現在(2017年)はバブル期を超える水準となっている。以上のように,学歴・性別によって新卒正社員率の推移はやや異なっているが,いずれも 1993 〜 94 年,1998 〜 99 年,2004 年,2010 年,が節目となっている。
氷河期前後の年代の大卒女性の新卒正社員率は目立って低いかなと思います。
当時、応募した会社の採用面接官が「女性のほう元気で受け答えよくて、総合職に向いている印象がある」とおっしゃっていた人もいましたが…。
ミドルの転職サイトの転職体験レポートを読んでいていつも不思議に思っていたことがあります。
40代男性のレポートによく見かけるのは、「こんなに落とされるとは思わなかった」という意味の言葉です。
同じ就職氷河期を経験したのであれば、書類が通らないのは当たり前、面接も何十社と受けるのが当たりの経験をしているはず。
どうしてその前提がないのだろう?と思っていました。
うすうす感じていましたが、就職氷河期はある意味新卒就職における男性と女性の格差なのではないかな、と思いました。
新卒就職率の低さ
内閣府の調査によると、就職氷河期世代(1974〜1983年生まれ)の新卒就職率は、他の世代と比較して10ポイント以上低いことが明らかになっています。
(就職氷河期世代の大学新卒就職率は平年よりも 10%ポイント以上低下)
我が国において、1990 年代の成長鈍化による影響を受けた世代(1974~83 年生まれ)は、いわゆる就職氷河期世代と呼ばれている。新卒就業率(新卒者から進学者を除いたうち、その年に就業した者の割合)を確認すると、大学(学部)卒業者の場合、就職氷河期の就職率が 69.7%(その期間を除く 1985 年~2019 年の平均は 80.1%)と平年よりも 10%ポイント以上の低下、高等学校卒業者も、平均就職率は 70.9%と平年の78.1%よりも7%ポイント程度の低下となっている出典:内閣府ホームページ「第2章 人口減少時代における働き方を巡る課題(第2節)」
就職氷河期まっただなかの2000年の新卒求人倍率は0.99倍。2024年現在、2024年卒の大卒者の求人倍率は1.71倍です。
売り手市場の基準とされる1.6倍を超え、現在は明らかに売り手市場になっているようです。
その前の1990年代は2.7倍ということなので、めちゃびっくり。
また、この数値はトータルでの数値なので、おそらく業種や職種によってもかなりの偏りがあるはず。
就職氷河期に就職率が 69.7%というのも、自分の希望している職種の求人が少なかった可能性もあるわけです。
また、
現在のように「ライフスタイルが多様化し、様々な働き方を選べるようになりあえて正規雇用にこだわらない」の数値結果、ではなく、「正規雇用を希望していたが、雇用が思った以上に少なく不本意な就業をせざるを得なかった」状況でした。
どこでもいいから就職しなさい、とも言われていた時代でもあります。
会社と人材のミスマッチほどお互いの不幸を生むものはありません。
就業をあえてしなかった選択をした人もいるのではと思います。
その後の正規雇用者は他の年代より高い
2000年代では、20代で正規雇用として就職できなかった場合、その後安定したキャリアを形成することが難しい時代でした。
新卒でのアドバンテージが今よりも強かった時代です。
新卒正社員を逃すと、後に続くキャリア形成は遅れを取ります。
一方で、企業では大量雇用したバブル世代がダブついていても解雇ができません。
バブル崩壊時に新卒採用を抑制し(特に女性の採用)、その後も数年にわたって中途採用も抑制します。
にも関わらず、2023年時点で当時の就職氷河期のコア世代の就業率は男性でも女性でも正規雇用率は、他の世代より高くなっています。
これは、就職氷河期世代が現在も就職困難であると言うよりはむしろ、最初の就職の困難をバネとして自ら仕事を勝ち取った結果と言えると思います。
それに加えて、職業紹介の民営化や政府の支援プログラムや若年雇用対策など、複合的要因が合わさった結果とも言えます。
その一方で、大手企業などは就職氷河期世代の年代がごっそり少ないこともあるようです。
団塊ジュニアは赤い数字の「4年後の年齢」で48~51歳になるので、人口構成と全く合っていないですね。この世代で、新卒採用が大幅に絞り込まれたことがよく分かります。
出典元:DAIMOND ONLINE
キリンの「内部資料」が物語る氷河期世代の惨状…“バブルとゆとりの板挟み”鮮明
事実、IT企業に務める同年代の友人と話しでは、社内には同年代の正社員がごっそりいないそう。
代わりに、同年代の派遣SEがたくさん雇われ、会社の技術の根底を担っているそう。
そういえば、わたしも転職や派遣として数多くの会社に所属しましたが…。
思い起こしてみると、同じ年代の人が少ないという体感です。
労働力調査などの数値上では、特に男性においての正社員率や就業率は、それ以前のバブル世代の水準並に上昇してはいるものの純粋に数値だけで判断してはいけないよな〜、と思います。
消費と貯蓄の傾向
就職氷河期世代は、上の世代に比べて実質消費支出額が5%〜12%程度少なく、個人消費が弱いという特徴があります。
また、貯蓄志向が強いことも指摘されています。
経済的基盤の弱さから「未婚」あるいは「夫婦のみ世帯」の割合が、かつての同じ年齢階級と比べて水準が高いことも特徴です。
中途採用や転職などでは、年功序列の恩恵がありません。
これらの傾向からも、不安定な雇用状況を反映していると考えられます。
独身者が、今後、積極的に結婚したいと思わない理由のうち、「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」を見ると、男女ともに「就職氷河期コア世代」で「当てはまる」と回答した割合が高く、特に男性では5割近くに上る
「就職氷河期コア世代」は、他の世代と比べて将来に対する不安を強く感じている。中でも、将来の年金受給に関する不安が大きく、「就職氷河期コア世代」の女性のうち4割以上が「高齢になっても年金受給が不透明・見通しが立たない」に「当てはまる」もしくは「やや当てはまる」と回答している
内閣府ホームページ「コラム5 就職氷河期世代考察~「人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査」より」
雇用の不安定さは、そのまま家計に直結します。
スタートに躓く人が多かったこの世代では、このような金銭感覚でも妥当かなと感じます。
結論
40代後半世代が該当する就職氷河期に関して調べてみました。
「就職氷河期世代は初手に躓いた世代だから今でもフォローしなければいけない」
「いまだに、非正規雇用が多い」
「いつまでも氷河期世代だけフォローされていて、甘えている」
「自己責任でしょ」
こういったことは、真実とは少しかけ離れていると感じます。
就職氷河期は数値からみても正社員就職には困難な時期だった。
その後は他の世代と比べても正規雇用となる割合が高くなっている。
ただ、経済的な面で見る限り、他の世代と比較して低い傾向がある。
事実、新卒で正社員として就業できなかったという事実は当時では大きなハンデです。
なぜならば、新卒採用というのはそれはそれは大きなアドバンテージだったためです。
さらに、就職氷河期世代の私たち、特に女性のみなさん頑張ってきたと思うんです(笑)
この就職氷河期と言われる世代のど真ん中のわたしですが、いつまでもこの時代のせいにしてはいけないと思うんです。
外部的原因はあったけど、その後の仕事を選択してきたのは自分、ということを忘れてはだめかな、と。